『男性美容師が、女性を馬鹿にする』という話をやっていた。
「頭使ってる？」
「話分かる？」
「だから、女は……」
というワードが繰り返されて、女性が怒るというもの。
それを見ながら、父が
「そんな美容師いるか？ありえんだろ。仕事なんだから」
と言い始めた。
男性がそう思うのは仕方がない。男性はそんな失礼な人間に会う率が低いのだから。
女性としては、充分共感できるぐらいにはありふれた出来事だと思う。初対面の美容師ではなくても、職場の人間、趣味で出会った人間。パターンは違えど似た事はある。
さらに父は続ける。
「こんな失礼な事を言ったら、客を逃すだけじゃないか。
……でも、おばさんはすぐ怒ることがあるけど。理由もなしにいきなり怒るよな」
……。
父は気がついてない。
自分が『テレビの中の失礼な美容師』と同じ発言をしていることに。
理由もなくいきなり怒る。と思うのは、自分が『女の話なんて聞くに値しない』と聞いてないから。
そして、『女には何を言ってもいい』と地雷を踏みまくっているから。
そしてさらに、父にとっては『ニコニコ自分の話を聞いてくれる女』は若くていい女で
『いきなり怒りだす女』はおばさんと切り捨てている事。
若い女性がニコニコしているのは、経験値が足りなくて「どうしたらいいか分からない」だけ。
怒ってくるおばさんは、散々同じ目に合っていて『黙って聞いていたら、相手が勘違いする』と理解した人間だという事。
相手を人間だと見てないから、『いきなり怒る』と相手の責任に出来るんだよ。
怒ってる理由をちゃんと聞いてないから、『いきなり怒る相手が悪い』になる。
テレビの中の美容師も、同じ理由で『悪意なくただのお喋り』と思って話しているだけ。
テレビでは女性が怒ってすっきり……という構成になってるけど、問題は何一つ解決してなくて、美容師の男性から見たら「おばさんは、いきなり怒る」になるんだろうな。
と、父の言葉を聞きながら思った。
美容師側の後日談があるなら、
「いきなり、ババアに怒鳴られてホント最悪だったよ。
俺、普通に話してただけだぜ？何も悪い事言ってないのに、なんで怒鳴られなきゃいけないんだ。
まぁ。もう二度と来ないって言ってたから、その方がこっちもありがたいけどな」
という話になるのだろう。