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同性婚と近親婚

「同性婚を認めるなら近親婚も認めろ」を「論破」するのは難しい。


この記事だけではないけど、読んだ本にも『同性婚を認めるなら、近親婚を認めろ』というものがあった。

同性婚には反対する理由がないから賛成だと書いてあるが、それで『近親婚も』という話を出されると『自分に関係ない場所で同性婚する人がいるのは構わない』という他人事として考えているのかなと思う。

『同性婚に賛成』ではなくて『自分が知らないところで勝手にやってくれ』と言われた方がましだ。



近親婚はまず、血が濃くなるから禁止されているのだと思う。しかしこれは『子供を作る事はしない』ことで避けられる。そして、同性婚も基本的には子供は出来ないので『子供がいない夫婦が受ける社会的利益』の部分の話になる。

主に相続の部分だろうが、これも周囲への根回しである程度はどうにかなりそうである。よほどの資産家で遺産争いがない限りは。遺産は基本的に子どもと親が優先されるので、子供を作らないのであれば、問題は親であるが兄弟姉妹・おじおばやおいめいの関係であるならば、遺産相続に関する遺書でも残せばどうにかなりそうだと思う。

少なくとも赤の他人の同性よりも権利主張はしやすい。



しかし、近親婚と同性婚の明らかな違いは、『生まれた時から上下関係が存在しているかどうか』という点ではないかと思う。

同性婚でも『幼馴染との結婚』はありえるが、5歳以上離れている人と小さい頃から知っていて結婚したというのは稀だろう。しかし、近親婚の場合はこれがほとんどを占める気がする。

家族の関係には『上下関係』が存在する。特に5歳以上の年齢差には体格差も相まって『上下関係』が存在しないなんてことはない。

年に一度しか会わないから、血なんて関係ないというだろうか。その一度でも子供時代には貴重な一度である。その一度で上下関係はすでに印象付けられる。


ここで、現在では少数と思われるパターンも考える。年下のおじおばと年上のめいおいの関係。
晩婚化+少子化を考えると、このパターンは本当に稀だろう。昔はこのパターンも当たり前のように存在した。初婚年齢が早くて、何人も子供を産んだからだ。
年齢差が少ない場合は、恋愛関係という事もあり得そうだと思ったが、少子化の進む現代でこのパターンでさらに恋愛に進むというのは同性愛者よりも数がさらに少なそうだなと思う。


兄弟間の場合は、同じ家での生活なので生物的に恋愛対象から外されるというのも聞く。しかし人間は、本能を理性で押さえる生き物なので、生物的には除外する。となると、兄弟間での恋愛関係は何らかの障害か養育環境の問題ではないかなと思う。

もしこれが、親子間の婚姻を認めろというなら、『親になるべきではない人間を親にするな』という話だ。

近親婚が難しいのは『見知らぬ他人』ではないので、子供……もしくは年少者を言葉巧みに騙せてしまう事だ。だったら、年齢が近いものならいいのかと言われると、これはこれで恋愛は往々にして錯覚であることもあるし、誤認の可能性もある。それらを超えて『大人になってからやはり恋愛だった』として、彼らは何のために婚姻関係になりたいと思うのだろうか。この辺りがはっきりしない。最後の場に立ち会いたい?これも場合によるだろうけど、血縁者ならばそれなりに優遇されそうなのではと思う。相続も同じく。

血縁者は他人よりも権利主張を強くできる。何のために、その血縁よりも婚姻という資格が欲しいと思うのかが分からない。
同性婚の場合は、部屋を借りる時や最後の場や相続など、他人では決して主張できない権利のためにも婚姻制度が欲しいのだ。あと、子育ての時も……と書いておかないと、同性婚は子供がいないはずであると思われてしまう。

近親婚も同じく子育てのため?
ただの詭弁に付き合って本気で考えてみてもわからない。ただの『いちゃもん』を付けるだけの人間は『何のために婚姻制度を彼らが利用したいと思うのか』までは書いてくれない。


近親婚を認めろが通るには、『近親者だと知らなかった人間同士が大人になって出会い、恋愛する』という奇跡的な確率が必要になるが、そんな少数者はどれだけいるだろうか。


そもそも恋愛や婚姻にはまず『対等な関係性』が必要になるという視点がすっぽりと抜けている気がする。同性婚も異性婚も、『対等な関係の人間同士』がするものだ。
(社会的な性差別はあるが、それはいったん脇に置く)


近親者でその『対等な関係』を築くのは難しい。良くも悪くも『子供を養育するための関係性』の中では、社会の縮図としての『役割に沿った関係性』になるから。
赤の他人と近親者が違うのはただの血縁だからではなくて、固定した役割を持っているから、役割から抜けて関係性を築く事が難しい。


そういえば、上記の記事内で『恋愛はある種の洗脳なのだから、どんな恋愛も禁止できない』みたいなのがあった。
大人同士の恋愛と、子供同士の恋愛と、大人と子供の恋愛を混ぜるなよと思う。

全部を混ぜて、『あれがいいなら、こっちもいいだろ』と言い出すのは、どうなのだろう。
そして、それが言えるのは『恋愛とは何か。なぜ、私は相手を好きになるのか』を考える事すらしてこなかった人たちなのだろう。


考える必要がないマジョリティ側に自分たちがいることをまず、自覚して、その口を閉じていてくれるとありがたい。
同性婚を認めるならあれも認めろの前に、『婚姻とは何を認めているか』をじっくりと考えてほしい。


近親婚も『対等な関係の人間同士になる』という証明が出来てから、論破どうぞと思う。
同性婚が認められるなら、動物と結婚もできるのか、建物と結婚も……とか、言い出すのだろうか。『相手の意思をどうやって確認するんだ』と突っ込みたいし、溜息しかない。


そういえば、上記の記事内でも

 そうなると、「では近親婚は?」「重婚は?」ということになっていくはずですが、そのとき、「同性婚推進派」は、「両者の合意があり、他者が困ることがなければ、なんでもあり」という立場を突き進んでいけるのか?


というのがあったな。異性同士の婚姻も『両者の同意があり、他者が困ることがなければ、なんでもあり』だから、認められてると思ってるんだろうか。だったら、さっさと同性婚認めろと思う。そして、同性婚推進派はそんなことを言ってない。勝手な話を作るな。

『同性婚が認められても、異性婚をしている人やしている人には影響がない』という事を『他者が困ることがなければ、なんでもあり』と勝手に解釈するのはやめてくれ。

異性婚は女性が困ってるからやるんですよね。だって、賃金格差で女性は一人では生きられないのですから。だったら、やめにしましょう。女性が男性と同等の賃金を得ることが出来てから、異性婚にした方がいいですよ。と言ったら、「そうですね」と頷いてくれるのだろうか。現状の異性婚が『女性が独り身だと(社会的に)困る状態』だという事を抜きにして、同性婚は『困る人がいないからやるんだ』というのはおかしい。異性婚で女性側が困っている状態だと理解してないんだろうな。

男性の独り身と女性の独り身で言えば、女性の独り身の方が高齢になればなるほど貧困になるのだから、女性側は婚姻をした方が社会的メリットは大きい。ただし、個人的デメリット(家事育児仕事の負担)も大きい。

現状の婚姻制度は社会的にそのような制度になっているというのを理解してから、同性婚批判を理論的にどうぞと思う。むしろ同性婚の方がパートナーの性差がなくて『対等な関係』のまま婚姻を続けられそうとすら思う。


つらつら書いてしまった。
上記記事、本当に吐き気がするんだもの。それは『同性婚賛成とは言わないんだよ!』『自分の知らないところで勝手にやってくれ』というんだ。と、繰り返して書いておく。

賛成のフリした否定派が一番ダメージくるわ。


過去記事の『北陸のLGBTの生きづらさ』を書いた時とさほど価値観は変わらないし、某秘書官の「隣に住んでいたら嫌だ」というのもこの記事のアンケート結果と同じだなと思いながら見ていた。